第714号 人本経営成功企業が多数派になると社会はどうなるか

第714号 人本経営成功企業が多数派になると社会はどうなるか

人本経営成功企業が多数派になると社会はどうなるか

先日、セミナーの参加者から「人本経営に成功する企業が多数派になるとどうなってしまうのですか?」というご質問をいただきました。

「確実にいい社会になると思います。」と即答いたしました。実際、「人本経営の究極の目的は世界平和の実現だ」と公言する人本経営者は少なくありません。

まず、少なくとも人本経営に成功した企業では、人が幸せになることを追い求めますので、労働紛争が発生しなくなります。階級闘争に明け暮れてきた人類にとっては、これだけでも大きな進歩といえるでしょう。

規模を追わず、安定成長するしっかりとした組織体をもつ人本経営企業が社会に増えていけば、お互いの会社同士が共創するコミュニティを形成していくことになるでしょう。

人本経営のレジェンド企業「昭和測器」は、50年近く人本経営を実践してこられましたが、社員はおよそ30人という規模になっています。経営者の鵜飼俊吾会長は、あえて規模を大きくしないことが、持続可能性を高めていると語られています。同社の経営理念は「一燈照隅」です。小さくても確かに社会の隅を照らし続ける存在になっていくことを社員同士は誓い合い、共に幸せな人生を歩み続けていくことを実現してきました。50年ですから、あのバブル経済期をこの経営で乗り越えてきています。周辺企業は本業を忘れて不動産などの浮利におぼれ、急成長したものの、その後反転し破綻した企業ばかりになったと鵜飼会長は回想されています。

昭和測器のような、小さくても人本経営で輝く企業が世の中に増えていくと「万燈照国」となり、その国は確実にいい社会になっていくことでしょう。

■少子高齢社会の到来は悲観ではなく希望

人本経営に出逢い、その学びを深めていくうちに、わが国が少子高齢化の経済社会環境に覆いつくされていく現在の状況は、決して悲観的なものではないという感覚が強くなってきました。働き方改革もそうですが、世の中が人本主義的に変化していかなければ、お先真っ暗だという風潮が支配的になってきているからです。

現状の延長ではなく、生まれ変わらなければ、今後の発展成長はないと多くの企業が気づき始めています。そして、経済の最先端である物流のトップシェア企業、ヤマト運輸で今年象徴的に起きたように、現有勢力で適正規模の経営を実現していくために売上至上主義を捨て、人本位でダウンサイジングし、現実に生まれ変わり始めた会社が急増していると感じます。

さらに、人本主義に親和性の高い平成世代がまもなく30歳代に突入し、社会の中核で活躍し始める時代がやってきます。今後、社会の風潮として人本主義が中心軸になってくる必然性が高くなってきています。

2010年から人本経営の指導をさせていただいた大阪のヘッズ。今、振り返って暮松邦一社長はこう変化を語られています。

 【過去】   →  【現在】
売上中心    → 幸せ制作
戦略      → 利他
ターゲット   → 三方よし
勝つか負けるか → 皆が幸せになる

実に分かりやすいと感じます。三方よしの関係が、人本経営に成功した企業の数だけ社会に拡散していきますから、まさしく「万燈照国」の状態となっていく訳です。

■世界へ人本経営をいかに広げていくかが課題

ということで、わが国では少子高齢化という課題はあるものの、健全な方向へ社会発展していく可能性は高いと予測できます。しかし、外に目を向けて世界を見渡すと、増え続ける人口、テロや抗えない国家第一主義等、とても一筋縄ではいかないと暗澹たる気持ちにさせられます。特に、勝ち負けのロジックは根強く、それこそ国という概念が変わらない限り、世界全体が幸せになるという状態の実現は遥か彼方に感じてしまいます。だからこそ、日本は「どーせ無理」ではなく、こんないい社会ができるのだという見本となるように、世界に先駆けて人本国家になっていく大きな役割があると改めて感じ入るのです。

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