第715号 人本経営実現のための序盤のセオリー|2017|新SVC通信|株式会社シェアードバリュー・コーポレーション

新SVC通信

2017/12/18

第715号 人本経営実現のための序盤のセオリー

「人を大切にする会社」に関するトータル情報誌
新SVC通信 第715号



人本経営実現のための序盤のセオリー



2017年もいよいよ押し迫ってきました。未曽有の人手不足社会となり、これまでの経営のやり方では立ち行かなくなってきたということを悟り始めた経営者が増えていると実感できる一年でした。

ヤマト運輸のように劇的に業績重視から社員重視へ経営の軸をシフトし始めた会社が急増しています。

人本経営や人を大切にする経営という言葉は使わなくとも、明らかに人本主義をベースにした経営へ転換し始めた会社が増えています。

しかし、進み出しはしたものの、成功しているといえる企業となると、極端にその割合が低くなるというのが現状ではないかと感じています。

人本経営の重要性に気づいた経営者が、業績軸から幸せ軸へ首尾よく軌道を変えていくために実現すべき重要ポイントについて、本号では再確認しておきたいと存じます。

■大前提 経営者の不退転の決意

まず、経営者自身が、共に働く社員が生涯現役で働いてその職業人生を終える時、「この会社で働くことが出来て本当に幸せな人生だった」と口にすることを明確なビジョンとしてもち、昨日より今日、今年より来年、社風をよくしていく専心努力を継続し、光り輝く企業文化を皆でつくっていくことにぶれない心と強い意志をもって行動していると確信できることが大前提です。この自覚無くしてコトは成し得ません。

■実現ポイント1 心底共感してくれる右腕の存在

社員を幸せにする経営を実践していくのだから、不平不満をもつ社員がいるはずないと思い込み、強いリーダーシップで人本経営を形づくろうとアプローチしていく経営者がいます。この時に必要不可欠な存在がいます。それが、心底共感してくれる「右腕」の存在です。人本経営は経営者一人では実現は不可能です。社員一人ひとりの自立自発性の集合体となってこそ、光り輝くのです。そのためには経営幹部と一枚岩になっていくことが求められます。とりわけ右腕の存在は際立って重要です。腹を割って右腕となってほしい人材ととことん対話をし、協力を要請していきましょう。

■実現ポイント2 古参幹部との折り合い

人本経営に舵取りを変えようとした時に、当然会社には組織があります。その組織上の序列ナンバー2が、その先も右腕として存在してくれるのが理想ですが、現実的にはここで軋轢を生じる会社が少なくありません。特に後継者として経営者になり、「これからは人本経営だ」と張り切っても、長年業績軸で先代の経営者に仕えてきた古参幹部たちが真意を理解できず、抵抗勢力となってしまう場合があります。このパターンで人本経営の実現が頓挫している会社が、実は少なくないのではないという実感をもっています。

ここでも対話を重ねていくしかないのですが、経営者としてこれからの時代を考えたとき、持続していくためには「人本経営を愚直に実現していきたい」と伝えていきます。本気で心から伝えていきます。ここで非協力的な態度を古参幹部が示してきた場合、その状態で会社に人本経営を実践していくと、結果は目に見えています。現場の社員は混乱し、遅々として社風はよくなっていかないでしょう。

古参幹部が共感してくれない場合、変えることは不可能です。ここは折り合いをつけるしかありません。これまでの会社への貢献を称えた上で、執行メンバーから外れてもらうことに了承を取り付けることでしょう。出来る限り現在の雇用条件を守り、専門技術を活かす職や後進への技能指導の役についてもらうことに、納得してもらうまで話し合うことです。そして、これから会社が進もうとする方向について、積極的な協力はしなくとも、見守ってほしいという約束を取り付けましょう。

■実現ポイント3 人本経営を前進させるプロジェクトの起動

経営理念の浸透、経営指針、行動指針を打ち立て、現場に落としこむためのワーキングチームを発足していきます。メンバーには、人本経営に共感性が高く、意欲的な社員を指名または立候補で募ります。ここで経営者は一歩退き、メンバーにその後の進行を委ねる権限付与を行うことが求められます。これも一つの「本気の覚悟」の見せ所と心得ておきましょう。社員を信じて、性善説で関係の質を高めていくのです。ここまでが人本経営実現にむけた序盤のセオリーといえるでしょう。


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