第688号 働き方改革に着手する前に必ずすべきこと|2017|新SVC通信|株式会社シェアードバリュー・コーポレーション

新SVC通信

2017/06/12

第688号 働き方改革に着手する前に必ずすべきこと

「人を大切にする会社」に関するトータル情報誌
新SVC通信 第688号



働き方改革に着手する前に必ずすべきこと



社会的事象となってきた「働き方改革」。

それゆえに、いろいろな反動や不平不満が沸き起こっているようです。NHKの『あさイチ』では7日、「大丈夫?あなたや夫の“働き方”」というテーマに寄せられた視聴者のメールやファックスを紹介していました。

「制度が先に決まってしまって、社員の準備ができていない。無理やり回っている感じ」(医療周辺機器販売の40代男性)、「人数変わらないまま、仕事量減らないままなのに、早く帰れ、早く帰れと言われるので、実際は残業が増えています」(金融業の40代女性)
不満がたまっている現場が少なくないという報告がされていました。視聴者からの意見聴取は言いたい放題で事実確認がされていないことと、報道側がどういう意見を採択したいかという作り手の思惑が働きすぎるので、六分くらいの感覚で受けておくことが適当かと感じますが、こうした意見が少なくないことは充分に想像できるところです。

最近、ヤマト運輸の事例を掘り下げていますが、働き方改革は業務量と人員充足状況の現況分析をきちんと実施したうえで、望まれる状態へ改革を進めていくという大前提をふまえていかないと早々に頓挫していくであろうとことは火を見るより明らかです。

■5年間の傾向分析を行う

まず、以下の項目について過去5年間の傾向分析を行っていくことでしょう。

● 社員数の推移 ―― 採用数・離職者数(離職理由も)・離職率・3年定着率
● 業務量の変化 ―― 顧客数・商品数・取引数
● 業績の動向 ――― 売上高・粗利益(率)・経常利益(率)

社員数、業務量、業績がこの5年間でどう変化してきているのか、まず分析してみましょう。右側にある細目のどれが適しているかは、会社によってそれぞれでしょうが、実態がより反映できる分析をしていきます。

その分析結果から今後の改革の方向性を検討していきます。

社員数<業務量

ヤマトがまさにこれです。10年間で社員数は130%となっていますが、業務量が160%となっています。人が採用出来ているのに、人手不足を招いているこの場合には、業務量調整をしていかないと労務倒産というリスクがあります。ヤマトは大口のアマゾンから当日配送を撤退するという大胆な手段を講じました。自社でこの状態がこの先も続くことが予測されるならば、現状の取引のあり方を見直すことを断行していく決断が必要です。

社員数>業務量

残業を減らせと会社は求めますが、それでは生活が出来ないというパターンがこの場合には多そうです。働き方改革というテーマより事業計画そのものの見直しが必要でしょう。人本主義社会の進展に伴い、「幸せ創出」という命題に、自社の資源を活用してどのような有効供給が出来るのか、全社一丸になる好機と捉えて経営革新にのぞみましょう。

業績の動向については、売上高よりも利益が重要です。業務量調整や新規事業開拓していく際には、どれだけ利益貢献があるのかが、売上よりも重要な指標となります。

大規模量販店が圧倒的な勢いで周辺市場に展開してきたときに、それまで利益に貢献してくれた顧客に絞って高付加価値のサービスを適正価格で提供することを実現し、安定経営を実現した「でんかのヤマグチ」の事例は伝説です。売上は激減しましたが、粗利益率は量販店のそれを凌駕する実績を出し続け、持続可能性を高めていきました。

現在の会社の状況についてきちんと情報公開したうえで、今後進むべき方向性を指し示し、社員一人ひとりに協力を求めていく丁寧な対話をしていけば、不平不満は起きないはずです。今、この時期に「働き方改革なんてどーせ無理」と放置する企業は、早晩その役目を終えてしまいます。真剣に考えましょう。


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