第697号 脱時間給志向 トヨタの新勤務形態とは|2017|新SVC通信|株式会社シェアードバリュー・コーポレーション

新SVC通信

2017/08/14

第697号 脱時間給志向 トヨタの新勤務形態とは

「人を大切にする会社」に関するトータル情報誌
新SVC通信 第697号



脱時間給志向 トヨタの新勤務形態とは



トヨタが新勤務形態を検討していると報じられました。働き方改革が社会的課題となってきている中、結局、法律の整備が進まない現状下にあって、今、企業で出来ることを模索する動きとして注目されています。

日経では、裁量労働制の適用範囲拡大とされていましたが、裁量労働制を新たに導入しようという訳ではなく、これは正しい報道ではありません。

東洋経済のレポートからトヨタが考えている新しい勤務形態を検討してみることにしましょう。

<対象者>
 係長職以上
<条 件>
 フレックスタイム制度適用者で本人が希望し、所属長、人事部門の承認があること
<内 容>
 残業時間に関係なく月17万円(45時間分の残業代に相当)を「みなし残業代」として支給

裁量労働制ではなく、いわゆる「前払い固定残業制」といわれる考え方をベースにしています。

トヨタの求人条件によると豊田本社(本社周辺の各工場含む)/8:30~17:30または8:00~17:00、東京本社・名古屋オフィス/8:45~17:45と始業終業時刻が決められています。フレックスタイム制度はコアタイム(10:00~15:00)が設定されており、完全週休2日制で運用されています。

対象者は、係長職以上で一定以上の自己管理・業務遂行能力を持つと認められる者とされています。しかも本人が希望しているということが要件になりますので、労働時間に縛られずに働くことを希望する社員を対象にしていこうとしていることがわかります。

■労基法との関連

みなし残業代を残業時間45時間分としているのは、時間外・休日労働の法原則の例外を認めている、いわゆる三六協定を適正に労働組合と締結したうえで、認められている月の上限とされている45時間からきていることは明確です。ただ、法的制約は、年360時間という縛りもありますから、実際には月30時間までとなります。その特例として協定で特約条項をつければ、1年の半分は月45時間の限度時間を超えることが可能となります。現在は、この場合の上限がなく青天井になっていますが、今後月100時間までの制限をしていく法改正が審議されています。

トヨタでは特別条項もつけたうえで、月45時間という「みなし残業代」を支払っているということで運用をしようとしているものと考えられます。実際に45時間を超える残業があった場合には、追加で割増賃金を支払っていくというルールにしようと考えているようです。おそらく運用で年間に12か月のうち6月までという現場への指導と管理は徹底していくものと思われます。

■17万円の水準

この「前払い固定残業代制」を導入する際に、よく問題になるのが労基法との関連に加えて、その額が実際の額より低くなってしまう場合です。例えば月例給与が30万円で、30時間分の前払い残業代ということで5万円しか支給していないとすると、所定労働時間8時間、週休2日制の場合、実際には6万4954円の支払いが必要になりますので、一部未払い賃金が発生してしまうことになり、不当な労務管理ということになってしまいます。この17万円という水準ですが、月給でいうとどのくらいを想定しているのでしょうか。

45時間プラス割増率0.25で算出できる56.25で17万円を割るとおよそ3,022円という単価が出てきます。トヨタは年間休日が121日となっていますので、年間労働日は244日、月平均は20.3日となります。月の所定労働時間は162.4ということになります。これに3,022円をかけるとおよそ49万円となります。

「みなし残業代」は、新たに追加支給をするということではなく、調整給など既存で支払われている手当が、支給名目を変えて「みなし残業代」に充当されると記事では書かれています。それであっても残業割増賃金の対象月給額を50万近くに設定しているので、まず未払い状態になることはないのではないかと考えられます。このあたりの大判振る舞いはさすがトヨタだからこそで、一般企業では模倣しにくいかもしれません。ですが自律、自発性に優れた社員に対して、始業・就業時間を本人の判断で柔軟に決める権限を付与して、現行法規でも合法性を担保していく方法論として、今後の動向を注目していきましょう。


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