ライブレボリューション|企業名|人本経営企業のベンチマーク|株式会社シェアードバリュー・コーポレーション

人本経営企業のベンチマーク

ライブレボリューション

ライブレボリューション編Ⅰ

寒天メーカーの伊那食品工業さん、そして、美容室のバグジーさんの取り組みを紹介して21世紀型企業が実践する理念経営について垣間みてきました。読者の皆様におかれましては、なんだか今までと違う経営というものが確かに存在している、そして、輝き出しているということを感じていただけているのではないかと存じます。それでもまだどんなものなんだろうと思っている方も大勢おられることでしょう。

そこで、本号では、これは確実に変化の波がきている、そして、その波が大きく高いものであるということを確信していただくことができる会社を紹介していきたいと思います。その会社は、モバイル広告代理店事業を展開しているITベンチャー企業です。

理念経営の波はあらゆる業界で起きています。そして、その変化の波に気づいて本気で変わった企業がリーダーとなっていきます。まだ従業員数40人という小規模ながら、今後、IT業界では、今回、ご紹介する株式会社ライブレボリューションの取り組みを嫌でも意識せざるを得なくなってくるに違いありません。理念経営を徹底すると、太陽のように光り輝くためその存在を無視することができなくなってくるからです。前置きはこのくらいにして、なんと『宇宙一の企業』になることを目指しているというこのライブレボリューションさんをご紹介をしていくことにいたしましょう。

代表を務めている増永寛之社長は、こう言います。「現代の多くの企業欠けているものがあります。それは「愛」です。私たちはみな、その現実を目にしています。しかし、その現実から目を背けているのではないでしょうか。」そして、うつ病や過労などで倒れる社員たちは、現在の多くの企業によって引き起こされている心の戦争の犠牲者だとし、もっと別の経営のやり方があるはずだと考え、「宇宙一愛される経営」を実践する企業をつくり、そこで働く人たちを増やして、より多くの人に平和な日々を訪れさせたいという壮大稀有なビジョンを掲げて企業経営をしています。実際にやっていることは圧倒されるものがあります。

『サービス残業なし』『ノルマ、競争のない営業』『メンバー第一、顧客第二主義』

まず、ライブレボリューションにはサービス残業は一切存在しないのだそうです。なんだ、そんな企業あるぞ、といわれるかもしれませんが、同社では労基法上の管理監督者の定義を厳格に守り、なんと取締役以外のすべての社員に対して残業手当を一分単位でつけているということです。ここまで迫られると確かに、多くは課長以上で、少なくとも部長以上には残業手当を支払っていない企業がほとんどでしょうから、その差は際立ちます。増永社長は、専門書をしらみつぶしに読み、自ら就業規則を作ったのだといいます。著書を読んでいるとわかりますが、増永社長は、当事者意識の塊のような人ではないかと感じます。サービス残業についてこう指摘します。

「サービス残業をなくせば、すべてが好転します。経営の中で残業代をきちんと支払うことほど難しいものはありません。せっかく残業代を支払っているのに、他の小さな違法行為ですべてを台無しにするのはもったいないと思います。」今や、確実に社員はわかっているでしょう。自分は役職になったけれど本来は残業代をもらえるはずだと考えているのです。そうすると、会社がルールを守っていないのだから、このくらい手抜きしたって構わないといった因果応報が仕事で繰り返されていくわけです。それが大問題に発展していくと経営を傾きさせかねない不祥事になるかもしれないのです。

ライブレボリューションは、社会的ルールへの遵守を理念の一つとして掲げており、残業代完全支給を実践していることで身をもって社員に知らしめているため、一人ひとりのコンプライアンス意識についての行動レベルの水準が高くなっているということです。クレドなどで行動基準を規定したら、それをまず経営者自らが行動していくことが大切です。理念経営の実践者は、この知らしめることを愚直に行なっているということが特徴といえるでしょう。

また、ライブレボリューションの営業マンにはノルマなどないというのです。それは、ノルマをなくせば営業という仕事はもっと楽しいものになるという考えがあるからとして次のように語ります。「ノルマというのは会社の都合であって、お客様の都合とはまったく関係ありません。にもかかわらずノルマに悩まされた営業マンが、押売りをしたり、嘘をついたりしてまで販売することはよくある話です。ライブレボリューションで営業する人がお客様から嫌われるようなことをしていては「宇宙一愛される企業」になどなれるはずがありません。」

このライブレボリューションですが、このわずか3年ほどで年商は3億8000万円から17億円まで伸びています。この理由は、リッツカールトンのクレドを中心とした理念経営に目覚め、同社でも2005年4月にクレドである『LR HEART』を導入したことがきっかけであるといいます。この『LR HEART』の理念に基づき、前述した『サービス残業の撲滅』『ノルマ、競争のない営業』といった経営人事改革が断行され、会社が劇的に変化しているようです。

言うまでもないことですが、他の理念経営を実践する企業がそうであるように、ライブレボリューションでも『メンバー第一、顧客第二主義』と社員満足の経営が実践されています。同社では社員のことをメンバーと呼ぶそうです。これは、社員は単に労働力を提供するだけの存在ではなく、ライブレボリューションを構成する大切な一員と考えているからだといいます。さらに、会社は誰のものかという意識ではなく、会社はメンバーそのものであり、心あるメンバーが集まった「心ある存在」であるととらえているのです。

これを知らしめるために『LR HEART』のなかで、『メンバーへの約束』として以下のことが誓われています。『メンバーを幸せにする会社でなければ「メンバーから選ばれない」ひいては「お客様からも選ばれない」ということを認識し、メンバー一人ひとりの人生が充実し調和の取れたものとなるよう配慮します。』

当通信はコンセプトを「選ばれる」企業の経営人事を考えるための情報提供に変えると宣言しましたが、同社でも選ばれるという概念に重きをおいていることがうかがえます。これば偶然ではなく、当然であると考えます。次号では、理念定着のための苦心とそこから生まれた画期的な成果物についてみていくことにいたします。


新SVC通信 第239号(2008.05.26)より

ライブレボリューション編Ⅱ

宇宙一の企業を目指すという壮大なビジョンを掲げているライブレボリューションですが、理念を具現化していくためには、半端な取り組みでは出来ません。そのため同社でも理念を実行するための行動規範となるクレドである『LR HEART』を導入しています。

理念経営を実践していくうえで、クレドは欠くことが出来ない重要なツールであることは他の理念経営を成功させている企業の事例をみても明らかです。しかし、理念=社長の思いが現場の社員の行動にまで一本の芯が通るまでには相応の努力が必要となってきます。

増永社長の書籍でもそのことについての苦労談が語られています。『LR HEART』では29の行動規範が示されています。例えば10では『最高の商品とサービスを提供します。お客様が欲しいものだけを提供し、こちらからは売り込みません。徹底的にお客様のニーズを研究し、記録し、商品とサービスを磨き上げ、新規開拓よりも目の前のお客様を一人ひとり満足させることに注力します。』といった営業姿勢に対する行動規範が示されています。

そういう状態をすべての社員が実行することで、宇宙一愛される存在になっていこうということになる訳です。同社では朝礼で、この『LR HEART』の内容を毎日1ページずつ読み合わせをするようにしているということです。発表者が全員の前で当該ページを読み上げ、次に、その内容に関連する自分の体験談を3分ほどで発表し、その後、社長がその日のページに関連する話をするということを毎日続けているのです。

それでも、行動できる部分と出来ない部分があったり、出来る日と出来ない日があったといいます。そこで、自ら『LR HEART』を守りたいと思うために、自ら『LR HEART』を無視してはまずいと思ってもらうために、『LR HEART』を給与の評価基準に組み込むことをしています。

クレドを評価制度に組み入れるということは理念の浸透をしていきたい企業にとって、重要な経営人事マネジメントの改革ポイントになることは疑いようがありませんが、問題はどの程度、そして、どのようにルールをつくっていくかということになります。この点について、ライブレボリューションの評価制度は極めて独創的なチャレンジをしています。書籍でも詳しくノウハウを公開していただいているので同社が行っているクレド重視の評価制度について検討していくことにしましょう。

労使ともに絶大な信頼を寄せることができるクレドづくりが成功への第一歩となる

なんと達成数値・社内順位・職種・役職を給与制度との連動から切り離したというのです。評価項目として採用しているのは、「価値観」と「パフォーマンス」の2点にしているそうです。

それぞれの評価基準ですが、「価値観」については、『LR HEART』に記されている内容を質問形式にした70項目から成り立たせているということです。例えば、・常に『プラチナの社員章』を身につけていますか?・プロフェッショナルとして期日を守っていますか?といった項目が並んでいて、その一つ一つの質問について考課者が以下の評点をつけています。

N.わからない 1.明らかにできていない 2.どちらかというとできていない 3.どちらかというとできている 4.他の模範となっている

考課者ですが、被考課者ごとに上司だけではなく、部下、同期など6名が選択されていて、本人はわからないように匿名で評価をしているということです。Nはノーカウントで、1から4をそのまま点数としてカウントし、70項目の評価の平均点を出し、さらに評価者6人の平均点を出していきます。

いわゆる360度評価というやり方ですが、クレドに沿った行動をしているかどうかをお互いが評価し合うという状態をつくり出していることになります。一方の「パフォーマンス」の評価基準ですが、『この人のパフォーマンスはどれですか』という質問のみで実施され、評価者は、15段階の評価をしているといいます。給料は、「価値観」の平均点と「パフォーマンス」の平均点を掛け、それに「昇給換算値」を掛け合わせて自動的に決まるようになっているということです。

この結果、『LR HEART』に則った行動をすることと周りの人に役立つことで評価が上がり給与も上がるということになります。

このような大胆な評価制度や給与制度を導入できるためには、クレドに対する信頼が労使ともに絶大でないと実現は不可能といえるでしょう。逆にいえば、信頼に足るクレドが完成し、クレド中心の人事制度を構築すれば、会社は劇的に変化すると考えられます。

これだけの改革をした訳ですから『LR HEART』の導入により、退職者の発生も少なくなかったということですが、増永社長は、価値観の合わない人たちが辞めていったので残ったメンバーとの意思疎通がぐっとよくなったと回想しています。

お互いの意見に相違が出たとしても『LR HEART』を基準に結論を導き出すことができるようになり、感情的なトラブルがほとんどなくなったといいます。そして、結果としてわずか3年で年商は3億8000万円から17億円までに成長してきたのです。

急成長することは、理念経営を実践する21世紀型企業の目指す姿ではなく、持続的に成長していくことが大切ですから、今後、同社はいかに安定感を保ったまま成長していけるかということが課題になってくるものと考えますが、共通の価値観の芯が相当に太く育っていそうですので高度成長と安定経営を実践していくのではないかと期待しています。

振り返って、自社ではそうした改革が実現できるかどうかを考えてみてください。難しいとお感じになりますか?しかし、リッツカールトンのクレドもライブレボリューションの『LR HEART』も人間として本来あるべき姿が書かれているだけなのです。

伊那食品工業の塚越会長は、「21世紀は『回帰』の時代である」とおっしゃっています。本来あるべき姿を追求していくことができる企業が21世紀を引っ張っていくことになることは確実であると確信しています。成せば成るの精神で、御社も21世紀型企業へ変身していきませんか。

新SVC通信 第240号(2008.06.02)より

 

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■株式会社ライブレボリューション(増永寛之代表取締役社長)
東京都港区。2000年8月創業。モバイル広告代理店事業。社員数40人。ライブレボリューションという社名は「私たちとかかわるすべての人たちの人生革命に寄与したい」という想いをこめてつけられた。リッツカールトンのクレドを中心とした理念経営に目覚め、2005年4月、同社のクレドである『LR HEART』を導入、以来、『メンバー第一、顧客第二主義』『サービス残業の撲滅』『ノルマ、競争のない営業』『自分たちの給与を自分たちで決める給与制度の導入』などさまざまな経営改革を断行し、わずか3年で年商は3億8000万円から17億円まで伸びる。

※オフィシャルサイト
https://www.live-revolution.co.jp/

※参考文献
『宇宙一愛される経営』 増永寛之 著
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